アデノウイルス感染症①
― 分類 ―

「アデノ」とは扁桃腺やリンパ節を意味する言葉で、アデノウイルスはその名のとおり、扁桃腺やリンパ節の中に潜んで増えます。アデノウイルスは正20面体構造をとるDNA ウイルスであり、エンベロープを有しません。特に、季節特異性がなく年間を通じて分離されます。人間に感染性があるアデノウイルス(Human adenovirus)は、現在51種類の血清型(型)が確認され、これらはA~Fの6つの種(species)のいずれかに分類されています。有名なのは夏がぜのプール熱(咽頭結膜熱)を発生させるウイルスとして知られており、1~8型がよくみられます。どの種類がどんな病気を起こすのか、ある程度わかっており、咽頭炎、扁桃炎、肺炎などの呼吸器疾患、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎などの眼疾患、胃腸炎などの消化器疾患、出血性膀胱炎などの泌尿器疾患から、肝炎、膵炎から脳炎にいたるまで、多彩な臨床症状を引き起こします。遺伝子の類似性によって分類した種は、その他の物理化学的性状や血清学的特徴のみならず、アデノウイルスの病原性とも一致しており、単にアデノウイルスが検出されたという情報よりも種別、できれば型別の結果が情報の質としてはるかに高い意味を持っています。すなわち、たとえばアデノウイルス血清型のうち致死的な肺炎等を引き起こすことで知られる7型(B種のひとつ)が検出されたのと、8型(D種のひとつ)が検出されたのでは全く意味合いが異なります。前者では呼吸器系に基礎疾患を持つ患者に感染しないように、入院患者であれば個室に移すなどの対策が必要であり、後者では眼疾患の拡大を防ぐための対策が必要となります。また、34型や35型(B種に属し、泌尿器系に親和性が高い)が検出された場合では臓器移植患者が感染しないよう注意が必要となります。種と疾患の関係は大まかに次の通りとなります。

A種: 胃腸炎(F種より頻度少ない)

B種: 呼吸器感染症、咽頭結膜熱(プール熱)、出血性膀胱炎

C種: 呼吸器感染症(幼児)、咽頭結膜熱

D種: 流行性角結膜炎

E種: 呼吸器感染症、咽頭結膜熱

F種: 胃腸炎(enteric adenovirus)

近年のアデノウイルスの傾向として、以前には少なかった7型が増加してきたことがあげられます。わが国ではアデノウイルス7型の分離報告は1994年までは極く少数の散発例のみでしたが、1995年以降急激に増加し、1995年~1998年には全国的流行がみられています。アデノウイルス7型の感染では、心肺機能低下、免疫機能低下等の基礎疾患のある人、乳幼児、老人では重篤な症状となることがあり、呼吸障害が進行したり、さらに細菌の二次感染も併発しやすいので注意が必要です。その後、1998年~1999年にはアデノウイルス3型が、1999年~2000年にはアデノウイルス2型が多く検出されています。

アデノウイルスは小児のウイルス感染症としては一般的によくみられるウイルスで、乳幼児の急性気道感染症の10%前後がアデノウイルス感染症といわれ、小児では重要な病原体の1つです。主に1歳以上の子がかかり、感染症発生動向調査での罹患年齢は5歳以下で80%以上を占めていますが、まれに大人もかかります。