アデノウイルス感染症③
― ウイルスの型 ―

アデノウイルス感染の病型はウイルスの型によって、大体以下の8型ぐらいに分かれます。

①上気道炎、気管支炎

発熱、鼻汁、咳、咽頭痛などを主な症状とするいわゆる‘カゼ’の原因になります。時に高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などのインフルエンザ様症状や中耳炎を起こすこともあります。

②肺炎

アデノウイルス7型は,心肺に基礎疾患を有する乳幼児では、特に、重症肺炎を呈することもあることが知られています。5歳以下の乳幼児がかかることが多く、髄膜炎、脳炎、心筋炎などを併発することもあります。

③扁桃炎

扁桃腺に膿がついたように白い滲出物が付着し、高熱が3~7日間続くことが多く、血液検査では白血球が増えて血沈・CRPなどの炎症反応が強く、細菌感染と区別がつかない場合があります。

④咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱の流行をおこすのは多くは3型、あるいは4型、7型、また2型、11型、14型もみられ、散発例として、1~8 型、14、19,13/30型の報告があり、プールを介して流行することがあるため、プール熱とも呼ばれます。逆に、これらの血清型のアデノウイルスが感染しても、必ずしも咽頭結膜熱の症状を来すとも限りません。

通常夏期に流行し、6月頃から徐々に増加しはじめ、7~8月にピークとなります。本邦の感染症発生動向調査からみると、過去は夏期に流行の山がみられ、数年おきに流行規模が大小していましたが、1999 年より秋と春にも小さな山がみられるようになっています。小規模アウトブレイクとして起こる場合には、季節を問わず、多くはプールを介した発生ですが、病院や施設、デイケアセンターなどでも報告されています。季節性流行の場合は、学童年齢の罹患が主で、5歳以下が約6 割を占めています。

発熱をもって発症し、頭痛、食欲不振、全身倦怠感とともに、咽頭炎に起因する咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂を訴え、3~5日間程度持続します。眼症状は一般的に片眼から始まりますが、真っ赤に充血し、その後他方にも出現します。また結膜の炎症は下眼瞼結膜に強く、上眼瞼結膜には弱いとされています。眼に永続的な障害を残すことはありません。また、頚部特に後頚部のリンパ節の腫脹と圧痛を認めることがあります。潜伏期は5~7日とされています。

<感染症法における取り扱い>

 咽頭結膜熱は新感染症法では4類感染症であり、学校保健法では第二種伝染病に位置づけられており、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から毎週報告されています。報告の基準は以下の通りで、学校保健法における取り扱いは、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止とされていますが、病状により伝染の恐れがないと認められたときはこの限りではないとされています。

○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の2 つの基準をすべてを満たすもの

 1. 発熱・咽頭発赤

 2. 結膜充血

○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの

⑤流行性角結膜炎

主としてアデノウイルス8型が起こします。目が充血し、目やにが出ますが、咽頭結膜熱のように高い熱はなく、のどの赤みも強くはありません。学校伝染病の一つで、伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となります。

⑥胃腸炎(嘔吐下痢症)

ロタウイルスと同じく、乳幼児の嘔吐下痢症の主な原因となります。特にアデノウイルスによる腸炎は、腸重積を起こす原因になると言われています。

⑦出血性膀胱炎

主としてアデノウイルス11型が起こします。排尿時痛があり、真っ赤な血尿が出ます。

⑧無菌性髄膜炎

他のウイルスによる髄膜炎同様、発熱、嘔吐、頭痛が主な症状です。