タバコと健康③
― タバコの3悪 ―

 タバコの中にはダイオキシンや砒素など身体にとって有害で毒性のある物質がたくさん含まれており、「タバコは毒の缶詰」ともいわれます。特に「タバコの3悪」として知られているのは、ニコチン、タール、一酸化炭素です。
 ニコチンは血管を収縮させ、血液循環を悪くし、脳卒中などの脳血管疾患、心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患など、さまざまな循環器病を引き起こします。タバコは習慣性があり、一度吸い始めるとなかなか止めることができません。吸わないとイライラして集中できず、頭痛がして体がだるく、ニコチン中毒による禁断症状が起こります(身体的依存)。また、タバコを吸うと気持ちが落ち着いて、いい気分になれるという錯覚が起こります(心理的依存)。このように、タバコは脳神経中枢に働き、麻薬と同じように薬物依存をおこす中毒薬物です。世界保健機関(WHO)はタバコがやめられず、次第に本数が増え、タバコが切れるとイライラする状態を「タバコ依存症」として疾病の1つに分類しています。禁煙したいと思っている人は喫煙者の約9割といわれていますが、禁煙に成功する人は1割以下とされ、一度吸ったら死ぬまでやめられないのがタバコです。厚生労働省の実態調査によると、日本の喫煙者の半数以上の1,800万人がタバコ依存症で、若い頃から喫煙習慣をつけた人ほど依存症になりやすいことがわかっています。
 タバコの煙には一酸化炭素が5%含まれ、酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンと酸素より強力に結合して、酸素欠乏の状態を起こします。このため、エベレストの頂上で生活しているのと同じような状態となり、息切れ、疲れやすさなどの症状が出て、運動能力が低下し、脳血流も低下して、ボケの原因にもなります。
タールは代表的な発癌物質で、喫煙によって、肺組織が毎日タールに曝されると、組織の破壊による慢性肺気腫や肺がんを引き起こしてきます。
 最近、厚生労働省の研究班が日本癌学会誌に発表した全国4万人以上を10年間にわたって追跡した調査研究によれば、喫煙者の死亡率は、非喫煙者を1とした場合、男性で1.6倍、女性で1.9倍高く、がんによる死亡は男性1.6倍、女性1.8倍、心臓病や脳卒中などの循環器疾患による死亡が男性1.4倍、女性2.7倍高いと報告しています。さらに、喫煙しなければ、男性の22%、女性の5%が死亡を予防できたとしています。
 また、禁煙すれば、その日から肺がんや虚血性心疾患で死亡する危険率が徐々に低下するという報告もあり、決断した日から禁煙をすれば、少しでも喫煙による死亡を減らすことができます。