テレビ・ビデオの子どもへの影響⑥
― 子どもへの影響④ ―

 2001年7月には川崎医科大学片岡直樹小児科教授が「テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している!」を著し、テレビ・ビデオの影響で、新しいタイプの言葉の遅れの子ども達が増えており、言葉の発達、コミュニケーション能力の発達が阻害されることを警告しています。
 この新しいタイプの言葉の遅れの子ども達の特徴は、運動機能の発達は年齢相応にありながら、言葉がほとんどしゃべれず、社会性の発達がみられないことだとしています。この生育環境によって生じる言葉の遅れは、①乳児期からテレビやビデオに子守りをさせていた、②朝から晩まで、ほとんどテレビのつきっぱなしの生活をしている、③子どもは、テレビのない生活時間をほとんど経験していない、④子どもが早期教育のビデオにはまっている、⑤両親そろってテレビ好き、という育て方と環境に影響され、言葉の遅れの子ども達の中で、これらに該当する点があると疑われます。
 さらに、子どもの側からみたこの新しいタイプの言葉の遅れを見つけるチェック項目として、①3歳になるのにまったく言葉を発しない、②意思や要求、あるいは感情の含まれた言葉がなく、おうむ返しが目立つ、③自発的に発する言葉でも単語でしかない、④「○○はどこ」など問いかけても指ささない、⑤意思や要求を言葉で言わず、態度や行動でしか示さない、⑥周囲の人、特に母親ですら親密感を示さない、⑦表情に乏しい、⑧家族とすら目を合わせようとしない、⑨いつも一人の世界にひたりがちである、⑩自分の思い通りにならないと、泣き叫ぶなどのパニックになりやすい、⑪友達と遊ぶということをしない、⑫見立て遊びやごっこ遊びをせず、オモチャなどとの接し方が即物的である、⑬テレビ・ビデオを消すと落ち着かず、パニックになることもある、⑭生来おとなしく、手のかからない子で、表情がなく、言葉もない、⑮かつては年齢相応の言葉が出ていたが、いつしか言葉がなくなった、⑯いずれにしても、年齢相応の言葉や表現力からは大幅に遅れている、があげられます。
 これらの点に該当するから、すぐに自閉症であると診断されるのではありません。この新しいタイプの言葉の遅れや社会性の乏しさは、育て方と環境によって生じた状態であり、幼児期、特に3歳までに適切に対応すれば速やかに回復・改善していくことができます。
 その対応策として、新しいタイプの言葉の遅れを予防するための15か条をあげます。①テレビは消しましょう、②1つの番組が終わったら、必ずスイッチを切りましょう、③ながらテレビはしない、④録画しての繰り返し視聴はしない、⑤市販作品は買わない、⑥子どもと向かい合って遊ぶことを厭わない、⑦抱っこを惜しまない、⑧一緒に絵本を読む、⑨歌を唄ってあげる、⑩添い寝してあげる、⑪家庭においても、戸外においても、常に言葉で語りかける、⑫ごっこ遊びや見立て遊びに導く、⑬早期教育よりも、意味深い数字や文字の教え方、⑭テレビで見るより実体験を共有する、⑮機嫌がよいお父さん、お母さんでいること、です。
 どれもやれそうですが、忘れがちなことです。すべて完璧する必要はありません。できることをできるだけやって、親子の言葉や心のキャッチボールを増やしていけばいいのです。