ノーテレビデー③
― テレビと睡眠 ―

米国とカナダの55000人の小児科医などを会員に擁する米小児科学会(American Academy of Pediatrics;AAP)は、1980年からマスメディアの影響から子どもたちを守るために、両親や小児科医に対して、マスメディアへの関わり方について報告し続けており、その公衆教育委員会は「メディア教育」として、①メディアの暴力シーンや表現が小児を暴力的性格にする、②プログラムにしろ、広告にしろ性的なものが多く、若者は年間14000回以上これらに暴露されているが、若者のためになるものは少ない、③タバコ会社は年間600億ドル、酒造会社は年間200億ドルの宣伝広告を行っており、これらを見ていると、何となく喫煙や飲酒をしたくなる、④テレビやテレビゲームと肥満ならびに学業成績との関係についての両親や子どもに対するメディア教育は、メディアの悪影響を緩和すると報告しています。
また、その機関誌「米小児科学会誌」(Journal of AAP)1999年8月号で、「2歳以下の赤ちゃん、特によちよち歩きの時期には、テレビを一切見せてはならない」との声明を発表しました。その理由として、「乳児期の脳の発達には、両親や他の大人たちとの直接的な接触が絶対に必要で、テレビはそれを妨げる」との見解を述べています。さらに、同機関誌は、1999年9月号で、「子どもとテレビ」の第2弾として、「夕方から夜にかけて、子どもにテレビを見せるのは、睡眠障害の原因となる。特に、ベッドル-ムにテレビを置くのは止めよう。寝室のテレビは、案外軽く見られているが、非常に重要な問題である。寝る前に暴力番組などを見ると、とくに学齢期の子どもは寝つかれなくなり、心身の健康に悪影響を残す。」との記事を掲載しました。
 この記事は、ロ-ドアイランド州のハスブロ-子ども病院とブラウン大学の小児科医たちが報告に基づくもので、このなかで、報告者は、「就寝前のテレビの潜在的な悪影響について、医師たちはもっと認識すべきだ。医師は親たちに向かって、子どもたちの寝つきが悪い場合、寝る前までテレビを見せていないかどうか、チェックするように言うべきである。」と述べています。
 この報告者たちは、幼稚園から小学4年生までの子ども495人を対象に、テレビを見る習慣と睡眠状況について調べ、その結果、毎日テレビを見る習慣が多い子どもほど、睡眠に入りたがらない、寝つきが悪い、不安感が残る、睡眠時間が短い、などの睡眠障害が多いことが示され、特に、寝室にテレビのある子どもには、4人に1人の割合で、睡眠に問題のある子どもが多く、「テレビを見ている間は、その分睡眠時間が削られていることを意味する。暴力番組や刺激的な番組を見ると、寝つかれなくなる子どもが多い。子どもたちは、本来なら外で遊ぶとか、スポ-ツで汗を流す時間をテレビに当てている。ますます睡眠の質が悪くなっている」と報告は述べています。