メディアリテラシー⑥
― イギリスのメディアリテラシー概念 ―

イギリスのメディア教育の6つのキー側面(Cary Bazalgette著)(抄訳)○BFI(英国映画協会)によって設立された特別調査委員会で取りまとめられた6つのメディア教育のキー側面(Key Aspects)。メディア教育に関する、最も基本的な概念の取りまとめを目指したものであり、学習をサポート、向上させる機能を持つ。

○メディア教育とは、これら全てのキー側面を使用し、柔軟にかつ適切な方法でこれらを組み合わせられることができる能力を育むこと。

(1)エージェンシー(Agency)

 メディア・テキストは個人、あるいはグループにより作られたものである。メディア制作者及びメディア作品の背景に対する理解-メディア制作者、出資者等により、メディア・テキストの意味、重要性、信憑性がどのように変わるのか。

(2)カテゴリー(Category)

 いかなる分類も解釈の違いを生じる。また、すべてのメディア・テキストは何通りにでも分類できる。-メディア作品の制作及び理解の双方において、カテゴリーは考えをとりまとめるのに役立つ。しかしながら、メディアの理解の前にカテゴリーによる期待を生じさせ、理解に対して影響を与えるものでもある。

(3)テクノロジー(Technology)

 いかなる技術の選択も違いを生じさせる。-技術はメディア作品の「質」や「出来映え」を左右するだけではなく、「意味」にも影響を与える。-メディア・テキストの技術的な観察能力は、メディア制作経験による傾向がある。時間と機材といった環境を整えれば、この技術スキルの獲得に年齢は関係ない。

(4)ランゲージ(Language)

 メディア・テキストのなかの全てが意味を持つ。-全てのメディアはそのメディアの意味を構成するそれぞれの「言語」を持っている。-言葉や音、音楽がイメージにどのような影響を与えるか、ある特定の意味を強調するために、何がどのように使われているのかについて考えることが必要。このための批判的理解や創造性を高めるため、実際に制作してみることが重要。

(5)オーディエンス(Audience)

 知らない人々に対してメディア・テキストを作ることができる。-受け手はメディア・テキストから意味を作り出すものである。-生徒同士で互いのメディア作品に対する反応(Respouses)を比べることにより、人種や年齢、文化的背景等の違いによって、テキストの解釈が異なることを理解することができる。また、逆に、あるメディア作品がどのような受け手を狙っているのかも推測できるようになる。批判的分析と実際的な作業の両面から、受け手に関する理解を深めることが可能。

(6)リプレゼンテーション(Representation)

 メディア・テキストは様々な方法で現実に関係する。-メディア・テキストと現実の関係は、受け手と制作者のそれぞれの受け取り方により影響を受ける。子どもはテレビと現実の区別がつかないといわれるが、子どもはテレビを現実として受け入れるのではなく、テレビがどの位現実的なのかという判断をしているのである。-「ステレオタイプ」、「バイアス」、「イデオロギー」のような問題を重要視する教師もいるが、これらをメディア教育の中心におくと、テキストと現実の関係について、子どもの自主的な判断を阻害するおそれがある。これらの問題をより効果的に理解、分析するため、より広いリプゼンテーションの文脈で考えるべきである。

Canadian Association of Broadcaster’s Code(カナダ民放連の放送綱領):

子どもがテレビで見る暴力場面を制限するために、カナダ民放連の「テレビにおける暴力に関する自主綱領」が1994年1月に発効した。

放送綱領を読んでみよう。「Watching TV」はテレビで放送することができるだろうか。放送すべきだと考えるか。それはなぜか。またはなぜそう思わないのか。何時に放送すべきだろうか。放送するに当たって警告をつけるべきか。放送すべきかどうかをクラスでぜひ議論してみよう。なぜすべきか、またはなぜすべきでないのだろうか。クラス単位で議論するために、放送綱領のポイントをリストにしておこう。

 基 本 的 な 概 念

  1.メディアは構成されたものである。

  2.メディアは現実を構成する。

  3.オーディエンスがメディアから意味を読みとる。

  4.メディアは商業的意味を持つ。

  5.メディアはものの考え方(イデオロギー)と価値観を伝えている。

  6.メディアは社会的・政治的意味を持つ。

  7.メディアの様式と内容は密接に関連している。

  8.メディアはそれぞれ独自の芸術様式を持っている。