― 単純ヘルペス(単純疱疹)① ―

 ヘルペスウイルスには単純ヘルペス(疱疹)ウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)があり、HSVの感染によって皮膚や粘膜に水疱(水ぶくれ、疱疹)をつくる病気が単純ヘルペス(単純疱疹)です。HSVにはⅠ型(HSV-1)とⅡ型(HSV-2)があり、Ⅰ型は主として唾液から感染し、口唇(口唇ヘルペス)や口腔内(ヘルペス歯肉口内炎)や眼(ヘルペス角結膜炎)や目の周りや顔(顔面ヘルペス)、指(ヘルペス(疱疹)性 疽)など上半身に水疱をつくります。Ⅱ型は性行為で感染することが多く、性器やお尻、肛門周囲、足などに出ます(性器(陰部)ヘルペス)(表)。

 口唇ヘルペスは「風邪の華」とも呼ばれ、最も頻度の高い病型で、小児の初感染(初めて感染した時)が多く、歯肉口内炎になると、歯肉が腫れて出血しやすくなります。浅い潰瘍が口の中にでき、物を食べるときに痛みを伴い、水分も取れなくなって脱水になることもあります。口内炎として再発することは稀で、再発の多くは口唇ヘルペスとなります。
 ヘルペス性 疸は、指端を中心に痛みを伴う小水疱で、乳児期にヘルペス口内炎から指しゃぶりによって感染することが多いとされ、成人では歯科医療従事者に感染することがあります。
 ヘルペス角結膜炎は、乳幼児では皮膚粘膜病変からの自家接種によって起こることが多く、表在性の角膜潰瘍を形成します。その他の眼病変として、眼瞼炎、虹彩毛様体炎、全ブドウ膜炎などがあります。
 主な感染経路は接触感染ですが、飛沫感染することもあります。潜伏期間は2~7日で、口の周りなどの皮膚や粘膜の違和感、刺激感や痒み、ほてりなどがおこり、赤くなって、しばらくすると米粒くらいの水疱ができて群がり、ただれて(糜爛)、黒くなってかさぶた(痂皮)になって1~2週間程度で治ります。性器ヘルペスではしばしば神経痛のような痛みを伴うことがあります。すべての疱疹が痂皮化するまで、他人にうつす可能性があります。学校伝染病では第3種の「その他の伝染病」に分類され、「伝染のおそれがなくなるまで出席停止」ということになっています。