外反母趾②
― 進行 ―

 外反母趾の進行は、可逆期、拘縮期、進行期、終末期の4つの時期に分かれ、治療法も異なります。

 可逆期は、足の拇指(母趾、親指)が外側に曲がっていても、内側に曲げようと自分で外転筋に力を入れたり、外から力を加えて内側に曲げてやれば、拇指が正常な元の位置に簡単に戻る時期です。靴を履いている間、特に先の細い靴では、拇指が押されて外反していても、初めのうちは、靴を脱げば、筋肉や関節包、靭帯などの伸縮力によって元に戻ります。しかし、徐々に、外転筋や内側の関節包、靭帯がゆるみ、伸縮性が失われて、靴を脱いでも元に戻らなくなります。この時期には、適切な靴による治療が有効で、装具や体操(運動療法)も行なわれます。

 拘縮期は、外反母趾の状態が長く続いて、内側の関節包や靭帯が縮んでしまい、拇指を外側に曲げる内転筋も短くなり、拘縮がおこり、外転筋や外からの力で、拇指が正常な元の位置に戻らなくなった時期です。靴や装具や体操による保存的治療が行なわれます。

 進行期は、外反母趾の状態が更に長く続いて、拇指の付け根の関節が、拇指を曲げる母趾屈筋腱の上から、内側に外れてしまいます。X線写真で見ると、短母趾屈筋腱の中にある種子骨が外側に脱臼しています。この時期になると、足の指を曲げたり伸ばしたりする力が、拇指を外側に曲げ、第1中足骨を内側に広げるように働くので、靴に押されなくても、立って歩こうとして拇指に力を入れるだけで、拇指が外側に曲がってしまい、自然に外反母趾が進行します。炎症が強く、痛みがひどい場合には手術が必要になることもあります。

 終末期は、外反母趾がかなり進行し、拇指が第2指の下にもぐりこみ、拇指の付け根の関節が脱臼し、拇指を踏み返すのが困難な状態となります。腱が拇指を引っ張っても、脱臼して回転中心を失って機能しなくなっているので、これ以上外側に曲がらなくなっています。こうなると手術以外に治す方法はありません。