発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害①

 15歳以下の小中学生の少年サッカーのスポーツ外傷は、他のスポーツに比べると、厳しいコンタクトが多く、選手同士の接触による転倒などで骨折や捻挫を起こしたり、ボールを蹴る時に、相手を蹴ったり、足を引っかけたりして、膝や足関節のケガ(外傷)が多くなり、特に、骨折や脱臼が多くみられます。しかし、成人と比べるとスピードのある激しいプレーや接触は少なく、発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷は、プレーヤー自身によって起こることが特徴で、ジャンプやターンをした時などの転倒による足関節の捻挫や、ボールを蹴ったりした時の剥離骨折などが多く、膝靭帯損傷や肉離れなどは少なくなっています。
 日本体育協会は1987年から3年間、全国の約1万人の小学校高学年のスポーツ少年団員の活動状態調査を行い「いま体にケガや故障がありますか」という質問に対し、2374人が「ある」と答え、種目別ではサッカーが30%とトップでした。調査した3年間に医者にかかった男子469人中サッカーが165人で、野球に次いで多く、野球のスポーツ障害のほとんどが野球肘なのに、サッカーでは骨折や捻挫が多くなっています。
 栃木県内の小学校サッカーチームに属する568人を対象に行った獨協医大の調査によると、1日2時間週6日練習している小学校が32%、週5日が28%、両方で60%を越しており、これまでにケガをしたこともなく、今のところ体のどこにも痛みのない子どもは35%しかなく、残りの2/3の子どもは体のどこかに異常があるとしています。このうち、ケガや痛みのある子どもの65%が両親に相談し、監督やコーチに相談するのは21%しかいません。さらに、ケガや痛みを医者に診てもらっている子どもは30%しかなく、36%が家庭で治療しているという結果でした。また、福島県須賀川小学校の1054人の生徒を対象に行った調査によると、運動部員の45%が、何らかの体の痛みや異常を体験していますが、それらの59%の生徒は部活を休まずしており、勝利至上主義による練習のやりすぎ、やらせすぎによる使いすぎ症候群(Over use syndrome)などのスポーツ障害や外傷に対するサッカー指導者や家庭での適切な対応が必要であることがわかります。
 普通の外傷や障害での整形外科受診率は60~70%で、さらに足関節の捻挫ではさらに低く、受傷直後の適切な処置が大切です。また、1日1時間半週3日以上の練習はスポーツ外傷や障害の危険が増えるといわれており、子どものサッカーに関わる大人がこれらのことを意識して、勝利至上主義にとらわれることなく、子どもの健やかに大きく成長してゆく姿を温かく見守ることが大切です。