発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑦
- 疲労骨折 -

 発育期のサッカーにおける慢性の疲労性下腿障害としては、疲労性骨折、シンスプリント(shin splints、疲労性骨膜炎、過労性脛部痛)や慢性型のコンパートメント症候群(compartment syndrome)があります。
 サッカーでは疲労骨折は脛骨(近位1/3)、中足骨に多発します。脛骨の場合は、筋肉の反復作用、地面からの衝撃力によると考えられ、中足骨は前足部のストップ動作の繰り返しでおこり、筋肉の疲労により足アーチが乱れ、剪断力がかかるために生じるとされています。腓骨におこる場合は、足間接外果(外くるぶし)の5~7.5㎝上方におこりやすいとされています。また、第5中足骨基部(Jones骨折)は極めて治りにくいとされています。
 使いすぎが疲労骨折の主な原因ですが、内的要因として、硬いふくらはぎの筋とアキレス腱、解剖学的異常(回内足、扁平足、ハイアーチ、脚長差など)、月経異常や摂食障害による骨のもろさなどがあります。また、外的要因として、トレーニングサーフェイスの変化(柔らかいところから硬いところへ)、シューズの変更、使い古したシューズの使用などがあります。
 症状は運動によって増強する骨折部の痛みで、徐々に現れ、安静によって消失することを繰り返します。多くは圧痛や腫脹を伴います。練習強度や時間や頻度を増やした時に発生しやすいようです。第5中足骨の場合は、外傷性骨折としてみられることも多いようです。圧痛点上をしっかり叩いて、痛みがそのポイントだけに限局している場合は、疲労骨折によるもので、骨膜炎などの軟部組織の損傷では、痛みはさらに広がります。また、脛骨や腓骨の疲労骨折では、患側の踵を叩くと、骨への振動が骨折部に達し、そのポイントだけに痛みを感じます。2週間以上痛みが続く時は、医療機関を受診する必要があります。
 X線診断上、初期は骨折線がはっきりせず、骨シンチグラムで、限局性の異常集積がみられます。骨の変化は2~3週間かかるので、その頃にもう一度X線を取って、経過をみてゆきます。
 治療はまずスポーツ活動、特に脛骨、腓骨の場合はランニングのような足への繰り返しのストレス負荷動作を中止し、約6週間安静にします。痛みのある場合は、鎮痛剤などの薬物療法が行われます。早期復帰のためには、患部の安静が一番です。早すぎる練習復帰は治療期間を長引かせることになります。脛骨では癒合するのに3~6カ月を要することも多く、体重負荷のない水泳をして心肺機能の訓練をしたり、上肢や躯幹のトレーニングを行います。2週間以上痛みがなければ、6週間後にランニングを始め、5分間のランニング負荷で痛みがなければ徐々に運動量を増やしてゆきます。
 予防は、使いすぎにならないように、余裕のある練習計画を立てることです。