発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑮
― 下肢の筋痙攣(こむらがえり)-

 筋痙攣は、日頃よくみられる激しい痛みを起こす傷害ですが、直接医者がかかわることは少なく、自分やその場に居合わせた人によって治す事ができます。最も起こりやすいのは「ふくらはぎ」ですが、大腿や足の指にも起こることがあります。筋肉が極度に緊張し、血行が阻害されるので、非常に痛みが強く、歩行、運動ができなくなります。この突然に起こる筋肉の不随意の収縮を「こむらがえり」と言い、間代性と強直性に分けられます。

 間代性の痙攣は間歇的に筋肉の収縮と弛緩を繰り返し、強直性の痙攣は筋肉が痙攣するときに収縮したままの状態をいいます。
 筋痙攣の原因は筋代謝の失調とされています。その要因として、全身の疲労、オーバーワーク、体調不良、発汗による脱水、筋群の協調性の不足などがあげられます。きつい服装やストッキング、レガースなどで筋肉がしめつけられ、血行障害を起こして筋痙攣となることもあります。気温が高いとミネラル分がより多く失われがちになるため、冬よりも夏に多く発生します。さらに、静脈瘤や腰部の障害、シューズがあっていないとかよくないシューズを使っている場合や、足のアライメントの異常などでも起こります。

 応急処置として、痙攣を起こした筋肉をすぐに伸ばすことが大切です。ふくらはぎの痙攣では、まず、床に座らせて、痙攣を起こした側(患側)の足の膝関節は伸ばさずに90度に曲げ、両手でつま先を起こしていきます。この伸展を20秒間保持し、3~4回繰り返します。それで治まらなければ、補助者に手伝ってもらいます。痙攣が治まったら、患側のふくらはぎと膝の裏を冷水を含ませたスポンジでこすり、患部の血行を促進します。大腿後面の痙攣では、立った状態から痙攣を起こしていない脚(健側)に体重を乗せ、上体を前方に倒していきます。姿勢をもとに戻しても痙攣が治まっていると感じるようになるまで伸展を保持します。補助者がいる場合は、手伝ってもらい、後で冷水を含ませたスポンジでこすり、血行を促進します。

 予防のためには、試合や練習の前に必ず十分なストレッチングとウォーミングアップを行い、練習や試合中や休憩中の水分補給を十分行います。身体への吸収は、できるだけぬるめの温度がよく、冷たい飲料は避けたほうがよいとされています。痙攣を繰り返す時は、専門医を受診し、腰部の診察や血液検査を行う必要があります。