発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑯
- 筋肉痛 -

 筋肉痛は筋線維の部分的な損傷で、必ずしも深刻に考える必要はありませんが、適切な調整によって防ぐことができます。
 エキセントリックな筋収縮やブレーキ、維持や負の筋力発揮などのオーバーワークによって、筋肉に乳酸がたまり、乳酸と疲労産物が沈殿し、血流が阻害され、組織を刺激します。コンセントリックな筋収縮では、筋肉は疲労しても筋肉痛は起こりにくいのです。たとえば、坂道を下るエキセントリックな運動は筋肉痛を起こしやすく、坂道を上るコンセントリックな運動は筋肉痛を起こしにくいことになります。
 きつい慣れない運動負荷、長い休み明け、不十分な準備による筋の疲労などの原因で、筋の協調性が制限され、運動した翌日に、多かれ少なかれ筋肉痛が起こり、特によく使った筋では筋肉痛が強く、痛みによって運動できなくなることもあります。疲労と協調性の低下によって、捻挫やけがの危険性が高まります。また、筋肉が関節を安定させることができなくなるため、靭帯損傷の危険性も高まります。
 疲労産物をできる限り速やかに除去して筋肉痛の発生を防ぐためには、できるだけ早く積極的および受動的回復を行うようにすることが大切です。積極的な回復手段を行わず、代わりに受動的な回復手段だけでは不十分です。翌日になってしまうと、同じ効果を得るのは困難となり、パフォーマンス能力を元通りに戻すまで時間がかかります。したがって、たとえ疲れていても、練習や試合の後は、積極的回復として、クールダウンすることが必要です。まず、運動負荷を受けた筋肉をゆっくり伸ばし、10分程度の体操とストレッチングで筋肉の緊張をとっていきます。通気性のよい服を着て、熱がこもらないようにし、15~20分ゆっくりとしたジョギングをします。次に、受動的回復として、十分なシャワーで温度を徐々に上げてゆき、可能であれば、疲労回復用の37~38℃の温水プールで10分程度、力を抜いて心地よい感覚で泳ぎます。また、疲労回復のための入浴は、筋肉痛の予防に有効で、できれば練習や試合後1~2時間後に、塩を一掴み入れた37~39℃のぬるめの湯に10~15分つかります。
 中学生以上ではサウナで汗をかくことも有効ですが、皮膚がピリピリするほど熱いものは避け、60℃前後の低めの温度で6~8分程度を1~2回入ります。脱水にならないよう、サウナに入る前には必ず水分を十分取ります。サウナから出たあとは十分休息を取り、トレーナーなどの専門スタッフがいる場合には、疲労回復のためのマッサージを受けますが、触るだけで痛いような時はしてはいけません。
 筋肉痛を起こし、筋が硬直している場合は、こわばりがなければ、軽く走って、筋温が上昇することで改善されることもあります。このランニングは、新たに筋の疲労が起こるまでしますが、筋肉痛の原因となった運動負荷は行ってはいけません。