― 臍ヘルニア(出べそ)―

 臍脱(臍がとれること)後に閉鎖するはずの臍輪(ヘルニア門)が開存したままで、臍部の皮下に腹膜が袋状に突出し(ヘルニア嚢)、その中に腸や大網(ヘルニア内容)が腹腔から出てくるものを臍ヘルニア(出べそ)といいます。

 赤ちゃんはお腹の筋肉が弱く、成人に比べると腸管容量が腹腔容量よりも大きいため、泣いた時やきばって腹圧が上昇した時に臍の部分が拇指頭大(手の親指の大きさぐらい)からピンポン玉の大きさぐらいまでの突出(膨隆)します。生後10日から1カ月ぐらいに気づかれ、2~4カ月は増大することが多いようですが、成長とともにお腹の筋肉がついてきて出なくなってゆきます。

 触った時は柔らかく、手指で圧迫すると容易にグジュグジュといって還納(もとに戻ること)されます。嵌頓(ヘルニアが出たままとなり元に戻らない状態で、放置すると血液が巡らなくなり、腐ってしまう)を起こすことはまれですが、5.1%に嵌頓絞がみられたという報告があります。特にヘルニア門が1.5㎝以下の場合は注意が必要とされています。嵌頓状態になると、不機嫌、嘔吐がみられ、顔色不良となり、臍部を痛がり、ヘルニア部分が硬くなり皮膚の色が悪くなり、緊急手術が必要になります。

 嵌頓して緊急手術が必要になるもの以外は、自然治癒傾向が強く、生後6~8カ月、長くとも1歳ぐらいまでに80%以上が治癒します。臍ヘルニアの最大径が3㎝以上で、2~3歳ぐらいまでに治らなかったものは手術をすることになります。1歳以下でもヘルニアが大きく、子どもが落ち着かなかったり、家族などの周囲の不安が大きい時には手術をすることもあります。また、ヘルニア門が閉鎖しても、臍部のたるんだ皮膚の突出が目立つ場合には美容的な手術を行うこともあります。

 以前はコインや絆創膏で圧迫固定することもありましたが、かぶれたり、細菌感染を起こして化膿したりすることも多く、有効性もないため、最近は行われません。