― 自律訓練法① ―

 心と体は自律神経という神経系によって結ばれています。自律神経は、脳からの指令を受け、環境の変化や刺激に応じて体の状態を自動的に調整しています。自分で意識しなくても心臓は休まず拍動して全身へ血液を循環させ、肺は呼吸をしてガス交換を行い、食事をすれば胃腸が働いて消化吸収を行います。これらは交感神経と副交感神経という自律神経の働きで調節されています。例えば、発表会の前にはドキドキして緊張したり、悩んでいる時は眠れなかったり、食欲がなくなったりするのも、自律神経の働きによるものです。
 いろいろなストレスにより脳に刺激が与えられると、交感神経は身体を緊張状態に保つように働き、逆に副交感神経はリラックスした平常状態を保つように働いて、身体のバランスが保たれています。ところが、現代社会のように過剰なストレスを受けることが多くなると、交感神経の優位な状態が続き、身体の緊張状態が長引いて、自律神経のバランスが崩れ、体の不調につながっていきます。例えば、緊張している時は血管が収縮して血流が悪くなるため手は冷たくなり、逆にリラックスすると血管が拡張して血流が良くなり手は温かくなります。このように、ストレスによる緊張が続けば、手足の冷たい「冷え症」も起こってくるわけです。
 自律神経によってつながている心と体の仕組みを利用して、意識的にリラックスした身体の状態を作り、心も体もリラックスさせる方法が自律訓練法です。催眠療法の研究から出発して、ドイツの精神医学者Schultz,J.H.により体系化され、1932年に公表された心理生理的治療法です。
 自律訓練法は、系統だった自己暗示を続けることによって、自律神経をコントロールし、心身をリラックスさせます。自律訓練法がマスターできると、自分で自律神経のバランスを調整できるようになり、ストレスによる悪影響を減らすことができるようになります。自律訓練法を始めたからといって、すぐに効果がでるわけではありませんが、朝、昼、夜と1日3回を1カ月ぐらい行うと感じがつかめてきます。そうなれば、後はストレスを感じたときに行うようにすればよいのです。